木綿町曳山「武田信玄の兜」は、紅屋近藤藤兵衛の作で、塗師は畑重兵衛です。
元治元年の製作とするのが正しいようです。
本体は、粘土型の上に紙を張り、一閑張りで仕上げてあります。
鹿角は木型です。
兜の鉢の下の、眉庇(まゆおおい)の上の中央にある飾り毛や面の白い毛は、中国産の赤熊(しゃぐま)の毛を使用しています。
武田氏の重宝は葦威鎧であり、諏訪法性の兜の前立は鹿角ではなく、幅の広い鍬(すき)型であり、片方は銀色で、もう片方は金色です。
その付け根は金色の金具で飾られ、中央には武田菱が付けられています。
また、面は赤熊の毛で覆われ、面の飾りはなく、吹返しは先端を折り返して中央に武田菱を飾りつけ、鉢は大型の鋲(びょう)を付けただけで筋がありません。
眉庇も、その先端は凹凸のない学生帽のひさしのように弧形になっています。
木綿町では、武田信玄が上杉謙信から塩の救援を受けたという故事にちなんで、塩を大切に取り扱い、曳山にも決して塩をまくことをしないと言います。

著:戸川 鐵
(一部抜粋 「唐津神社の神祭と曳山に関する抄録」より) 唐津曳山を研究するための資料
※写真撮影:鶴丸 誠 2017年11月3日