本町曳山「金獅子」の獅子頭は、おそらく日本一の大きな獅子頭であろうと思われます。
「金獅子」も他の刀町や中町の曳山の獅子と同様に、角の後ろに人体の上半身を出せるように、頭毛を表す紺染苧麻(ちょま)との間に空孔が作られているのは、大手門を出入りする際に角を取り外したりもとに戻したりするためと、巡行途中で路上の樹枝や電線などの障害物をかわすために施されたものなのです。
金漆がはげたとき、一時的に銀エナメルで修理したこともあったそうです。
制作者は不明となっていますが、石崎八左衛門が制作者であると伝えられています。
本町が曳山に「金獅子」を選んだ理由としては、本町が城下町としては一番町なので、一番曳山「赤獅子」や二番曳山「青獅子」より以上の曳山を造ろうと思って「金獅子」を選んだのだとも言われています。
狭い町内を通るために、獅子の曳山の中でも「金獅子」だけは両耳とも真上まであがるようになっています。
また、「赤獅子」と「青獅子」は後部が竹かごで造られていて軽いのに対して、「金獅子」は全部が一閑張りで造られていて、重量が重くなっています。
栓木(支柱)は正角の一角で獅子頭の角度を整えています。
このような構造は「金獅子」たけです。

著:戸川 鐵
(一部抜粋 「唐津神社の神祭と曳山に関する抄録」より) 唐津曳山を研究するための資料
※写真撮影:鶴丸 誠 2017年11月3日